システム最適化のための理論的/実際的アプローチの接合
稲元 勉(信頼性工学研究室)

身の回りのさまざまな (人工) システムの振る舞いには自由度が存在し,制御/計画の余地があります.システムを適切に制御/計画すれば,システムから得られる利益を最大化,あるいは生じるコストを最小化できます.そのような最大化や最小化を達成するため,最適化手法およびその適用対象システムのモデル化,そして最適化手法のシステムへの適用方法をあわせて検討する研究をシステム最適化と呼んでいます.

現実のシステムを対象とした最適な制御/計画が望ましいことは論を俟ちません.しかし,最適な制御/計画のためには大規模な組合せ最適化問題を解く必要があり,現実のシステムの最適解を求めることは現在のところ現実的とはいえません.そのためシステム最適化は,適用対象が小規模・非現実的に過ぎないことを許容して (準) 最適解を目指す理論的アプローチ,(準) 最適解が得られる保証がないことを許容して妥当解を得る実際的アプローチという2つに分けて取り組まれているといえます.

本研究の目的は,理論的アプローチと実際的アプローチを分離したままとはせず,それら2つのアプローチをシームレスに扱える枠組みを構築することです.この枠組みの構築により,一方の成果をもう一方でに利用することや,求解規模と最適性をバランスさせたシステム最適化などが可能になると考えています.

具体的には,本研究は,対象システムとして AGV や宅配,エレベータシステムを想定し,最適解を得るための手法である整数線形計画法,動的計画法,分枝限定法や,妥当解を得るための手法である進化的計算手法,ルールベースシステムなどを用いて進めています.最近では,発展の著しい深層学習技術の利用を目指して,分類問題に対して人工神経回路網とルールベースを併用する研究も進めています.


 [ キーワード ]   数理計画法  システム最適化  機械学習  ルールベース